ここ何年か少年による殺人事件が起こると、大抵大きく報道され、
「加害少年の心の闇を探れ」とばかりに精神鑑定に持ち込まれる
ことが多いようだ。精神鑑定自体は成人の刑事裁判での精神鑑定
と同様の手続きを経て鑑定にはいるのだが、いくつか問題点がある
と私は思う。それをいくつか例示してみる。
たとえば、成人の殺人事件他の刑事裁判で精神鑑定が行われる
場合というのは、加害者(被告)の刑事責任能力の有無を問う。
よく知られている刑法39条問題であり、精神鑑定を通じて心神
喪失状態か、心神耗弱状態か、それとも刑事責任能力を持って
いるのかを争うわけだ。もし、精神病と診断されれば心神喪失
なら無罪判決、心神耗弱状態なら有罪ではあるが減刑される。
(この場合の精神病というのは具体的に言うなら統合失調症の
ことが多いようだ。他、鬱病、鬱状態、てんかんなどが考えられ
る。神経症や適応障害、人格障害は精神病とみなさず、責任
能力ありと鑑定されるようである)
では、少年事件の場合はどうか。
神戸連続児童殺傷事件の場合、加害者A少年の精神鑑定が
観護措置をとられてから第一回審判で決定され、3ヶ月かけて
少年鑑別所に鑑定留置されて精神鑑定を受けている。
結果、行為障害と診断され、さらに放置すれば統合失調症や
解離性障害などになる可能性があると結論された。その結果、
家庭裁判所は責任能力ありとし、事件はA少年の犯行である
と認めた上で、治療が必要として医療少年院送致を決定した。
問題は、この「治療が必要である」と認める場合なのだ。
精神鑑定を行った結果、なんらかの精神障害が認められたな
ら、成人のように無罪や減刑ではなく、「医療少年院送致」と
いういわば、「有罪判決」が言い渡されるのである。(安易に
少年事件の結果を成人の判決と比較するのはそれはそれで
問題があるのだが、それはまた、後日)
現に、その数年後に起きた佐賀バスジャック事件や、愛知「経
験してみたかった」殺人の17才の犯人達はそれぞれ精神鑑定
の結果、医療少年院送致の決定を受けている。
果たして、医療少年院が精神病院としてどの程度の治療を行
えるのかが疑問となる。勿論、こうした事件の犯人達が送られた
2つの医療少年院(関東及び、京都)は病院としての機能が整備
されており、医師や看護師が常勤し、治療と矯正の両面を行える
ようになっている。(はずだ(^^;))
もし、成人の加害精神障害者が保安処分として送られる施設が
将来整備されるとしたら、この医療少年院が雛形として有効で
はないかと、私個人は考える。つまり、精神疾患を持った加害
少年たちは成人では未だ整備されていない保安処分を受けて
いると解釈してもよいのではないかと思う。
そのほか、最近の事例で気になったことを列挙する。
一つは、精神鑑定をどの場所で行うかに関する問題である。
新大久保地区で13才の中学生が5才の子供をマンションから
突き落とし、殺人未遂事件となり、児童相談所から通告されて
家裁送致となり、精神鑑定を受けた事件。このとき、13才の
女子少年は都内の公立精神病院に送致されてそこで精神鑑
定を受けることとなったのだが、報道によると「保護室で事実上
監禁されている」として弁護士が東京少年鑑別所に場所を戻す
よう準抗告した。精神病院の閉鎖病棟の保護室と言ったら、私
の経験上(^^;)、暴れたり怒鳴ったりする落ち着かない統合失調
患者を落ち着くまで収容する場所であるわけで、少なくとも、13
才の病気かどうかもわからない女の子を収容するにはひどい環
境である。それと関係あるかどうかはわからないが、触法少年
として家裁送致された時点では犯行を認めたこの女子少年は、
鑑定後、証言を翻して自分は突き落としてはいないと犯行を
否定するようになってしまった。結局、13才であるため、少年院
送致も検察官送致も現状では不可能なため、児童自立支援施
設送致となり、女子を収容する児童自立支援施設のうち、唯一
施錠による行動制限を行える国立きぬ川学園に送致された。
せめて、精神病院で行うなら、一床部屋を確保できなかった
のか?もしくは児童精神科病棟なりで行えなかったか?何故
鑑別所での鑑定ができなかったのか、疑問の余地がある。
もう一つは去年末、茨城県で2件発生したひきこもり息子に
よる両親殺害事件。一方は成人だったため刑事裁判の手続き
でよかったのだが、問題は水戸市での犯行の方で、犯人とさ
れたのは19才の少年だった。検察庁は拘留期間中に鑑定留
置を請求し、家裁送致前で手続きが止まってしまった。50日の
鑑定留置が終了したところ、なんと19才の少年は誕生日を迎
えて20才となり、成人として家庭裁判所ではなく、地方裁判所
に起訴された。鑑定の結果は離人症を認められるが責任能力
ありとされている。この経緯はどう考えても成人になるのを見越
した検察による鑑定留置であったと考えてよいのではなかろう
か?もし、家裁送致されていて、鑑定留置を受けなかったとし
たら、結果検察官送致となる場合もあるが、もしかしたら少年院
送致となった可能性も否定できない。どちらのほうが、よりこの
犯人とされた少年にはよかっただろうか?