刑事施設受刑者処遇法成立
ついにきましたかと言う感じです。
ソースは読売新聞より。http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050518it05.htm
受刑者の人権に配慮するとともに、罪種別の矯正教育の受講を義務化する刑事施設受刑者処遇法は18日昼の参院本会議で全会一致で可決、成立した。
1908年に制定された監獄法の受刑者処遇の部分が初めて抜本的に改正され、監獄法の名称は消える。政府は2006年中の施行を目指す。
受刑者処遇法は、名古屋刑務所の刑務官による受刑者死傷事件の反省などを踏まえ、総則に「受刑者の人権尊重」を明記した。
受刑者の面会は最低月2回を保証し、対象者を親族以外の友人などにも拡大する。最低月4回の手紙発信も認める。原則として日曜日以外は戸外で運動する機会を与え、年1回以上の定期健康診断を行う。
受刑態度が良く、交通刑務所などで開放的処遇を受けている受刑者で、社会復帰に効果的な場合は、7日以内の外泊や外出、外部への電話を認める。
不服申し立て制度では、最初の申し立てに対する矯正管区長の裁決に不満がある場合、法相への再申請を新たに認める。
また、地域住民や有識者による刑事施設視察委員会を各刑務所に新設し、所内の視察を認めるなど、「開かれた運営」を目指す。
矯正教育では、受刑者個人の資質や環境、犯罪特性に応じた「処遇要領」を作成する。奈良市の女児誘拐殺害事件を受けて発足した法務省の「性犯罪者処遇プログラム研究会」が検討中の矯正教育や、薬物依存、暴力団離脱のプログラムなどの受講を義務づける。
受刑者処遇法の成立に伴い、監獄法のうち、警察が留置場に拘置する被疑者や判決確定前の被告など未決拘禁者の処遇部分は「刑事施設刑事被告人収容法」に改称され、現在の規定を踏襲する。
2006年度中の施行と言うことは、来年度中の施行と言うことで、現場での混乱がかなり予想されます。
早めの対応が必要かと思います。
正直言うと、刑務所に入ってくる人間の質の低下が顕著な状況でこういう法案を通すとはね……。たしかに今の時代にそぐわない部分が多すぎた監獄法なんだけども、ここまで受刑者の権利を強調する法案なんですかね。
法案の方をきちんと見ないとわかりませんけどね……
なお、法案の内容は、http://www.moj.go.jp/HOUAN/KANGOKUHO/refer02.pdf で閲覧可能です。現役の方は一度は目を通しておきましょう。
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コメント
瓢箪から駒のようだけど、奈良の事件のおかげかなぁ、今回すんなり改正法案が通過したのも。弁護士会も代用監獄問題で監獄法改正をはばみ、その結果100年生きる法律がずっと施行されていたんだから……まぁ、ようやく改正(受刑者の処遇についてだけとはいえ)できて良かったと私は思います。来年には施行となると、管理人の言うとおり、刑務官のパニックは目に浮かぶようです。
それと、矯正教育を義務化するというのも、応報刑から教育刑への変化という重大な意味を持ちます。刑務所勤務の法務教官もいるはずなんだけど、矯正局などでどんな議論がなされ、どんな教育を展開するのか、大変興味があります。今のところ皆様の視点は「性犯罪者矯正プログラム」ですが、新聞ではあと「薬物矯正プログラム」や「暴力団離脱プログラム」が出ているようですね。他にも「窃盗癖矯正プログラム」とか「飲酒問題矯正プログラム」とかが考えられるかなぁ……少し期待。
投稿: たつみ | 2005-05-19 06:25
私はとある医療施設で精神科の医師をしています。
刑務所などの施設については門外漢なのですが、思うところがあり書かせていただきます。
日本の精神科医療は医師法、医療法、精神保健法などいくつもの法律で規定、運営されています。このように法律を遵守して行われる点、また、精神科の施設はいわゆる医療だけでなく、矯正、教育的な内容も治療目標としている点などは刑事施設とどこか似ているのかもしれません。
この精神科の現場で、近年、患者の権利、人権が非常に重要視されています。精神科の施設では、症状の不安定な患者や、他の患者に対して危害を加えうる患者などを、外から鍵のかかる部屋へ収容したり、特殊な器具を使って身体(手足や胴体)を固定して行動を制限することがあります。
しかし、このような処遇は今日しばしば非難の対象となり、極力このような処遇を行わないようにとの勧告も時々出されます。また、患者は自身の処遇に不満がある場合、しかるべき機関に自由に異議申し立てができます。
患者の権利、人権を大切にしたいのは当然ですが、現場の人間としては、治療上必要があるとき、その患者や他の患者、時には医師、看護師などの職員の安全を保護する必要がるときなどは厳しい処遇もやむをえないのではというのが正直なところです。
管理人さんは受刑者の質の低下を指摘されていましたが、精神科施設でも、まるで別荘感覚で入院する患者、病棟規則を平気で破る患者、他の患者とトラブルを起こす患者、自分の主張が通らないと手首を切る、薬をまとめ飲みするなどして主治医とのかけひきをする患者などの問題ケースが少しずつ増えている印象があります。
このような状況下でも強く患者の権利、人権が擁護される背景に、かつていくつかの精神科施設で職員による患者への暴言、暴行などの非人道的行為が行われたことがあるという歴史的事実があります。もしかすると、このような行為に及んだ医師、看護師は「自分が患者を治してやっている」という無言の上下関係をいつの間にか意識していたのかもしれません。
患者と受刑者。対象や環境は違うのかもしれませんが、今回の法改正の背景には刑事施設の体質や刑務官と受刑者の関係(ともすると、無意識の上下関係、受刑者への差別的意識)などのなんらかの負の部分が噴出しているようでなりません。
もちろん、現役のときの管理人さんやたつみさんのように懸命にお仕事をされている方々が大多数で、そのような方の中には今回の法改正に対して、「現場のことをわかっていない」などといった不満を感じる方も少なくないと思います。
しかし、自分が相手をする人たちの権利や人権を擁護する世論が高まっているとき、法律の文面だけに目を奪われず、自分の属する組織の体質や過去の歴史的功罪にももう一度目を向けて、自らへの反省、戒めとしていくことも重要ではないでしょうか。
P.S. 思うところを次々と書いたため、乱筆、長文となりましたことをお詫びいたします。
投稿: XYZ | 2005-05-19 18:48
精神障害者(爆)当事者として、一言。
私も別荘感覚で入院する生保受給者なんですが、入る度に、違和感を感じるのです。本当に精神科単科含めて、精神病院・精神科医師は患者の「権利」を合理的判断で制限しているのか、だとしても、「主治医の判断で」という一文で外部交通権、身体拘束がなされるのは本当にそれでいいのか? という疑問です。
もちろん、そのような処置が必要な状況の患者が居るのは知っています。落ち着くまで保護室で監視下に置くのは仕方ないと思うのです。しかし、患者は「閉じこめられた」「何もさせてもらえなくて暇だし不満」という気持ちが沸いてくるのです。
もちろん、「患者の義務」は当然ありますよね。服薬は守る、院内規則は守る、疑問は主治医に質問して解決する、治療を優先する等。普通の総合病院ではそのような「患者の義務・権利」というのを入院案内などで明確に記している場所もあります。だけど、精神科は……。
今、私自身は入院していた病院や管理者である県に精神障害者(患者)の権利を制限するならば、明確に患者全てがわかるような掲示もしくはパンフレットを用意し、患者の義務と権利、権利制限の必要性と期限などを明確に示すべきではないかという提案をしています。XYZさんはどのように思われるでしょうか?
……ってなんか、話題ずれたけど(^^;)。すまん、管理人。
投稿: たつみ | 2005-05-19 23:31
補足。
ミシェル・フーコーというフランスの哲学者は監獄の歴史、狂気の歴史、そういった分野を彼自身の問題も含めて(ゲイであり、HIVにより亡くなった)思索した人です。この人に興味は持っているものの、なんとなくまだ入門書として書かれた解説書しか読んでないのですが。。。その中で、監獄と精神病院の共通性を確か言究していた気がするんですが……うろ覚えで済みません。つまり、近代化が進むにつれ、それまで社会の中でそれなりの居場所を持って過ごしてきた精神障害者が収容されるようになってきたこと、一方で犯罪者もまた中央に監視設備を整えた刑務所などに収監されるようになってきたという部分があります。共通性という意味で、興味あります。
投稿: たつみ | 2005-05-19 23:45
たつみさんコメントありがとうございました。
私の勤務する施設では、患者の行動や権利を制限する場合、制限内容やその根拠、治療的意義などを口頭で説明したうえで文書でも手渡しています。患者の理解、同意が不十分な場合は、保護責任者へも同様の説明を行っています。
あとこれは少し専門的なお話になりますが、入院の際には、任意、医療保護、措置など各々の入院形態に応じた入院告知文および入院計画書を手渡します。そこには患者の権利、義務、制限事項、治療方針、予定入院期間などが書かれており、異議申し立ての場合の機関の連絡先も書かれています。
また、患者の行動制限は確かに「主治医の判断」で決定されますが、私の施設ではそれはあくまでも治療的および法律的見地に即して行われており、必要があれば精神保健指定医という専門の医師が評価、判断します。
ただ、たつみさんのご指摘の通り、施設によりこのような対応に差があるのもまた事実であろうと思います。その点については、私も含め現場の人間の反省点と考えています。故に、患者の権利、人権を擁護する傾向が強くなるということもあるのだと思います。ただ、これについては国や県、厚生労働省、各種学会等を中心にガイドライン作成などの方向へは動いています。
語弊があるかもしれませんが、精神科医療施設、刑事施設などこれまで世の中が見て見ぬふりをしてきた施設で、現場の人間、施設に入る人、世論に何らかのずれが生じてきているようにも思うのです。そのずれが精神科医療や刑事施設における法改正や是正勧告というかたちで表に出てきているのだと思うこともあります。
ただ、上にも書いたように法律の文面のみに左右されず、自らの属する現場が何らかの変革を求められているという事実を真摯に受けとめていくことも重要であろうと思い、自身への戒めもこめて今回の投稿をさせていただきました。
たつみさん、私のお答えはこの程度のものなのですが、ご参考になりましたでしょうか?
投稿: XYZ | 2005-05-20 09:12